本日,平成28年3月4日に松江エクセルホテル東急にて開催されました島根県企業防衛連絡協議会(平成27年度事務担当者連絡会議)において,当職が講演させていただきました。
この協議会での講演は,今回で3回目となります。
今回は,前回と同様に,「企業における暴力団対策-錯誤事例を中心に-」と題して,近似の判例について説明させていただきました。
契約時には契約相手が暴力団と分からず契約してしまい,あとで契約相手が暴力団であることが分かった場合,契約を解除するなりしていかに暴力団との関係を遮断するかが企業においては大きな問題となります。
契約でいわゆる暴排条項を定めておけば,それに従い契約を解除して暴力団との関係を遮断できますが,契約にそのような暴排条項が無い場合には難しくなります。
契約に暴排条項が無い場合に,一つの方法として,もし契約相手が暴力団と分かっていれば契約しなかったとして意思表示の錯誤(民法95条)を主張して契約の無効を主張することが考えられます。
その場合は,動機の錯誤により意思表示が無効となるかどうかという難しい問題が出てきます。
近似の判例(最高裁平成28年1月12日)をみると,前記のようなケースで動機の錯誤を理由として契約の無効を主張することは難しくなっていると考えられます。
暴排が社会に浸透し,企業であれば暴排に関する情報を容易に入手でき,また,契約に暴排条項を導入することも進んできている社会状況のもとでは,契約時に暴排条項を定めなかったことで生じたリスクは自ら負担しなければならないといえるでしょう。
企業防衛のためには,契約書への暴排条項の導入,暴力団でないことの確約,表明をさせることが極めて重要といえます。